虫歯治療が入れ歯を招く? 1


「先日、中学生の女の子の患者さんのお母様から「虫歯の治療をする時はなるべく歯を削らないようにして欲しい。また金属ではなくレジンで治療して欲しい。」という申し入れがありました。何でも、2002年6月1日の朝日新聞と、2002年7月9日の日本経済新聞(夕刊)に「今の普通の治療では虫歯は治らない」と載っていたのだそうです。その朝日新聞の記事を御紹介しようと思います。

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「いまの普通の治療では虫歯は治らず、最後は入れ歯になることが多い」と聞くと、たいていの人はびっくりする。「ええ。歯科医でさえ、わかっているとは限らない」と第一生命保険の日比谷診療所歯科医長の安田登さん(東京医科歯科大学臨床教授)。まず歯科医に知ってもらおうと安田さんは今春、「来て見て接着」(共著、クインテッ
センス出版)を出した。

歯の象牙質の表面を固いエナメル質が保護している。エナメル質が溶かされ、象牙質に傷が及ぶと痛む。虫歯の傷は自然に治ることはない。そこで歯科医が修復する。すき間のない詰め物を作ればいいと信じてきた歯科医は詰めやすい形に虫歯部分を大きく削る。「自然なら1年かかる穴をたった10秒で」(安田さん)という勢いだ。

ところが、接着するセメントは唾液(だえき)で溶け、数年ですき間だらけ。詰め物やかぶせ物も材料により数年から15年ほどで落ちたり、欠けたりする。傷跡に再び菌などがとりつき、虫歯は再発、悪化する。こうした治療を受けているうち歯は無くなってしまう。

予防第一だが、別の治療法がないわけでもない。安田さんの本の共著者でもある東京医科歯科大学名誉教授の中林宣男さんが82年に開発した接着性レジン(樹脂)の応用だ。セメントと違ってこの樹脂は酸などに強いうえ、象牙質にしみ込み、間に「樹脂含浸(がんしん)象牙質」という人工エナメル層を作り、象牙質を保護する。

中林さんによると、接着性レジンは歯科で広く使われているが、まだ単なるセメント代わりが多い。「できるだけ歯を削らず、人工エナメル質を作って歯を守る。そういう使い方ができる歯科医は1割以下かな」
 (編集委員・田辺功)

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「従来の治療法は悪い方法で、治療をするほど歯が無くなってしまう」というセンセーショナルな論調で始まって、危機感を煽ることで無理矢理に一般読者の関心を引こうとする、良くない文章だと思います。朝日新聞は医療(特に歯科)に関する記事において、この手法を得意としており、このような無責任な記事が他にも散見されます。
これを読んだお母様に誤解を与えてしまうのも当然です。そこで、僕なりの見解をお手紙にして送らせていただくことにしました。その内容は後のページで御紹介いたします。


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