間違いだらけの歯科医院えらび:その4(治療費が安い歯医者編)


「どこか安い歯医者を知りませんか?」
このような質問はあまり受けたことはありませんが、人間ですから誰でも高いよりは安い方が良いに決まっています。ただし、高い歯医者が悪い歯医者で、安い歯医者は良い歯医者であると単純に決めつけられるものでもありません。
少なくとも自費(保険外)の料金に関しては、高い料金であってもそれなりの見返りがあって、患者さん自身が納得していただけるならば、それで良いのではないのでしょうか。要するに価値対費用の問題であって、「高いな」と感じるならばやめたほうがよいのです。

そうは言っても、よく「保険か自費か」という話になります。
これは本当に難しい問題です。
保険は公定価格、自費は言い値と、両者は全く性格の違うものですから、一緒に論ずることは不可能です。ここでは主に保険診療について解説しようと思います。自費に関してはこちらを御覧下さい。自費についてだけではなく保険についても、かなり的確な解説がなされているサイトだと思います。

さて、保険診療とは全国一律料金なわけで、どの歯医者で治療を受けても支払いは変わらないはずなのですが、実際のところ、このシステムは非常に複雑でありまして、時と場合によって料金が加算されたり半分になったりします。料金額の改定はもちろん、算定ルールの改定も頻繁に行われます。そのため、患者さんに分かりやすい料金表のようなものを作成し公開することは困難を極めます。よくある治療例についての料金表示ならば可能ですが、想定される全てのケースを網羅しようとすれば、逆にそれは非常に分かりづらいものとなってしまうのです。

実際に「保険診療の筈なのに同じ治療をしても日によって料金が違う」とか「去年A歯科医院で受けた治療と今年B歯科医院で受けた治療の料金は違う」ということが起ってくるのです。保険診療の場合、よほどの差がない限り、数回通院しただけで「あの歯医者は高い安い」と判断するのは無理があるのです。

ところで保険診療をラーメン屋に例えるなら、全国のラーメン屋どこで食べても400円で同じ値段であるというようなものです。もちろん、美味い不味いは値段に関係ありません。全国各地から最高と思われる食材を取り寄せて、丸1日かけて出汁をとってス-プを作っても400円。反対にコストを徹底的に切り詰めて食材を揃え、1時間で出汁をとってスープを作っても400円です。その400円にトッピングを加えていくと値段も加算されます。煮卵を入れて50円加算、チャーシュー4枚で150円加算、大盛りで100円加算、というような具合です。ただし、ナルトとメンマ、チャーシュー1枚までは最初の400円の中に含まれているので加算は不可、といったあんばいです。

ラーメンならば食べればその場で不味いか美味しいかが判りますが、歯医者はその辺が非常に判りづらいです。またラーメンなら何がトッピングされているか一目瞭然ですが、歯医者では殆ど判りません。
逆に手間をかけて出来上がるまでに時間がかかって客を少々待たせたとしても、確実に美味しいラーメンを提供できれば客は納得してくれるでしょうが、歯医者では「下手くそ」と誤解されるかもしれません。
ならば歯医者は手間をかけるだけ無駄で、とにかく早ければ良いのだということにはならないでしょうか。

経営者として考えた場合、どのように調理しても同じ400円ならば、スープや麺ににかかる手間とコストを切り詰めれば利益は上がります。そうなれば、あとは料理人の誇りとこだわりと良心にかかってくるのです。
さらに利潤を追求するならば、最初から400円に含まれているナルトやメンマを省略すれば良いわけです。でもこれをやると客には一目瞭然ですから、おそらく誰もやらないでしょう。しかし歯医者のように目に見えないものだったらどうでしょうか。でも一応ここまでなら定められたルールの範囲内での事なのですが、これ以上エスカレートしてくると一体どうなるのでしょうか。

開店のための資金で多額の借金を抱えていたり、人件費が膨らんだり、近隣に同業者が増えて1日の客数が減少したりすれば、最初の頃のこだわりや理想はどこへやら。1杯400円では割に合わない、もはや背に腹は変えられない、ということにもなるでしょう。煮卵を入れていないのにも関わらず入れたことにしたり、普通盛りなのに大盛りということにしたり、といった店も出現するかもしれません。もっとも、ここまで行きついてしまうと、もはや立派な不正行為ということになってしまうのですが。

これはホントに難しい問題なのです。

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