子供に暴力?? その1


以前、このコーナーで「インターネット歯科相談の落とし穴」ということについて書きました。
その項でも触れましたが、インターネットを使っての治療の相談というのは、多くの場合、相談した当事者の混乱が増すだけという結果に終わります。
ことに、現在の担当医に対して不信感を持っている患者さんがインターネットを使って相談をした場合、殆どは最後まで担当医に対する不信感は払拭できません。
冷静に考えてみれば、それは至極当然のことで、当事者たちと会ったこともない第3者が答えられることは、ごく当たり障りのない、いわゆる一般論の域を出ないものなのです。
しかし、相談する患者さんの側からしてみると、見ず知らずのドクターのその当たり障りのない意見が文字となってパソコンのモニター上で踊ると、不思議なことに非常に思慮深く、思いやりがあり、さらには知識もあり、果ては卓越した技術のあるドクターに思えてくるのです。
そして無意識のうちに「それにひきかえ、今の私の担当の先生は、、、」という思いが強くなってゆきます。
要するに、その患者さんにとって本当に利益になるケースというのは「極めて稀」だということです。

今回、ここでご紹介するのは、歯科ネット(http://www.shika.net/)というサイトに投稿された相談とそれに対しての回答の原文で、ある意味で上記の典型例です。
しかしながら相談に応えたドクターが非常に良い回答をしているケースで、興味深いものがあります。
また、今後このようなトラブルの事例が増えることも予想されます。
一般の患者さんはもちろん、医療側の関係者も是非一読していただければと思います。


投稿者名:サリー
URL :
タイトル:大変悩んでいます。
投稿記事:

はじめまして。よろしくお願いします。
昨日3歳の娘の歯磨きをしていて虫歯らしき歯を(左おくば)1つ発見しました。
本日歯医者に行ってみてもらったら、C2からC3ぐらいと言うことでした。
見た目は黒くなっていないのでわからないので、良く見つけたね。と言われた虫歯なんです。
「後日治療をします。」
と言われましたが麻酔をして削ると言うことにすごく抵抗があります。
このぐらいの子の虫歯は親の責任…。
心配で心配で可愛そうなことをしてしまったと後悔で…。
3歳の子供に麻酔をしてもよいのでしょうか?
この他には治療の方法はないのでしょうか?
教えて下さい。お願いします。

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投稿者名:t_tsutomu
URL :
タイトル:Re: 大変悩んでいます。
投稿記事:

 麻酔はアレルギーがないのであれば安全です むしろその虫歯を麻酔を使うことなしに中途半端な処置で済ませたり放置しておいて細菌がもっと深いとこ ろまで侵入してしまうことのリスクの方がもっとお子さんにとっては気の毒なことだと思いますよ
 過ぎ去った過去を悔いるより 未だ来たらし未来に備えるべきです 予防こそ最良の治療ですよ 虫歯は歯磨きでは予防できません 今回の治療が済んだら 予防をしっかりおこなってください

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投稿者名:サリー
URL :
タイトル: 大変悩んでいます。
投稿記事:

返信ありがとうございます。そうですね、後悔しても仕方ないですよね。きちんと治さないと子供の為にもならないということも良く分かりました。未だ来たらし未来のために!頑張って治して、これから虫歯を作らないように磨き方など教えてもらいます。17日に治療の予定です。頑張ってきます。m(_ _)m

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読んでお分かりのように、サリーさんの相談のきっかけは現在の担当医に対して抱いている不信感からです。
「麻酔をして削ると言うことにすごく抵抗があります」「3歳の子供に麻酔をしてもよいのでしょうか?」、、、とか、「この他には治療の方法はないのでしょうか?」、、、などというのは現在の担当医を信頼していないことの表れです。
現実には「本当は3歳の子供には麻酔をしてはいけないのではないか」とか、「実はもっと良い治療をしてくれる歯医者が他にいるのでは」ということの裏返しで、本音は「先生は相当に進行しているムシ歯と言うけど、本当はそうではないんじゃないか」というところでしょう。(是非もう一度、相談の文章を読んでみて 下さい。)

ここで言えることは、この担当医は今後必要な治療に関して「思いのほか大きなムシ歯で、おそらく治療には麻酔が必要になる」などの、少なくとも最低限の 説明はしているであろう、ということです。
それに対して、サリーさんはその場で質問をしているのか、それとも何も質問できずに帰宅したのか、これはこの文章からは判りません。
しかし少なくともこの時、「そんな治療が必要なほど大きなムシ歯なのか?」という思いからか、サリーさんは担当医に対して不信感を抱き、それが払拭出来 ずに帰宅していることだけは確かです。

また、子供にムシ歯が出来てしまったことに対するショックと自責の念があまりに大きく、現実逃避に走っていることも問題です。
極端な言い方をすれば「これが夢であって欲しい」「麻酔をするような治療をせずに済む方法はないか」と考えてしまっているようです。

またサリーさんは、まるでこれが我が身に起こった事のように「未だ来たらし未来のために!頑張って治して、、、頑張ってきます」と、自らを戒め奮起させ るが如く書いておられます。
子を思う母親の心理としてはよくある事でしょう。
しかしながら、母親が「歯科医院に行く事を大袈裟な事」にして「必要以上に子供を励まして」しまうというのは、子供にとっては完全に逆効果なのです。
(これは、当HPのこのコーナー(お子様が治療 を受ける前に)にも、一番最初の項目として記してあります。)
子供にとって「歯医者=伏魔殿」という図式が完璧に成立してしまい、こうなると泣き叫んだり暴れたりして簡単には治療させてくれません。
診療室で泣きながら「ママ、助けて!」などと言う時は、歯科医院に連れて来るまでの母親の言動に問題があった場合が殆どです。

もちろん担当歯科医師にも問題はあります。
サリーさんが不信感を抱いている状態のままで治療を行ってしまったことです。

後日、サリーさんは担当医に対する不信感を払拭出来ないまま、「頑張って」我が子をその歯科医院に連れて行くのですが、ここでトラブルが発生します。


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